スパッタリングの基礎

スパッタリングとは?

スパッタリングの概要

まず、スパッタリングは何のために利用される技術なのかと言うことをお話しします。結論から言うと様々なものへ薄い膜をつける=鍍金(めっき)を行うための技術です。通常メッキと聞いてイメージするのは恐らく液体の中へ対象物を浸したり、高温で蒸発させた気体へ対象物を晒したりするものではないでしょうか。

また半導体素子等はガラス等の対象物(基板)へ非常に薄い金属膜を形成してその膜で回路を作ることで非常に小さなICや電子部品を製作しているため、非常に薄くなければならず、また均一でなければなりません。液体へ浸す方法や、高温気体へさらす方法ではそう言った均一な膜を作成することは困難です。

そこで、空気やその他の邪魔となる分子を真空状態にして無くした空間に他の物質と反応しない様なガス、つまり不活性ガス(希ガス)を入れ高電圧をかけることでイオン化させて、そのイオンを膜にしたい物質(銅やアルミ等)にぶつけることで、膜にしたい物質の原子を飛び出させてそれを対象物(基板)へ付着させてゆくことで膜を形成することで均一に、また高温や液体にさらされることなく不純物の少ない膜を作ることができます。

この様にイオンをぶつけて、つけたい膜となる物質へぶつけ、原子を飛び散らせる方法であることから、スパッタ(まき散らす、ぱらぱらと降り注ぐという意味)、スパッタリングと呼ばれています。

スパッタリングを使用した装置で実際に使用されている技術や、スパッタリングの種類等基本的な内容から、近年実用化されているパルス放電でカソードでの挙動がどの様になるか、またどの様なパルス放電でどの様に膜質改善効果があるかなどの実用的な内容までとても分かりやすく、プロセス技術の第一人者によって書かれています。

スパッタリングの具体的な仕組み

スパッタリングでは通常、グロー放電と呼ばれる現象を利用して真空中でアルゴンやヘリウムといった不活性ガスを陽イオン(原子核)と陰イオン(電子)に電離させて、そこで発生した陽イオンをターゲットと呼ばれる金属やガラス等の薄い膜にしたい材料に衝突させます。

ここで、特にDC電力でのスパッタは金属の膜しかつけることは出来ませんが、高周波でのスパッタの場合にはガラスやその他の絶縁体を膜としてつけることができます。これは絶縁体がコンデンサの役割を果たし、直流は通さないが交流になると通過する性質からスパッタリングを行うことができます。

また上記の様に通常の場合、原つけたい膜の物質、材料(ターゲットと呼ばれます)にぶつけるために入れられるガスは他の物質と反応してしまわない様に、不活性ガスが用いられるのですが、あえて酸素や窒素の様な反応するガスを入れることで、

化合物を生成させて様々な性質をもった膜をつくることもあります。スパッタリング時に物質同士を反応させて化合物を生成することから、これらの方法は反応性スパッタ、またはリアクティブスパッタと呼ばれています。

グロー放電とは?

上記でグロー放電を利用して、不活性ガスを電離して・・・と延べましたが、ではグロー放電とはいったいどう言うものなのでしょうか。まず密閉された圧力の低い空間=真空状態の中に、陽極と陰極の一対の電極を置き、この電圧差を大きくしてゆくと、一定の電圧をこえたところでもともと一定の割合で浮遊している電子が電界により加速され不活性ガスの原子に衝突します。

衝突された原子はそのエネルギーで電子がはじき出されます。このはじき出されら電子がさらに他の分子へ衝突しまた電子がはじき出されます。これが繰り返され多くの原子が電離した状態になります。すると電離されている陽子が高電圧で発生している電界によって陰極に向けて加速され衝突することで陰極の電子がたたき出されます。

このたたき出された電子を二次電子と呼びます。この陰極から飛び出した二次電子がまたガスの原子に衝突することでさらに陽イオンと陰イオンへ電離することでさらに多くの陰イオンが発生し大きな電流が流れます。ここで発行するのは原子の周りをまわっている電子が励起されて飛び出すのですが、この電子がもとの準位に戻るときにエネルギーを放出し発光します。 この現象がグロー放電と呼ばれています。

ここでグロー放電を発生させるには大気中ではイオンを加速するのに障害となる分子、粒子が多すぎるため圧力を大きく下げ真空中(といっても電離するための少しの気体=ガスが必要ですが)で電圧を発生させる必要があります。

また放出する2次電子を断続的に供給する必要があり、そのためにRF電源やDC電源が使用されます。(DC電源もRF電源もこの2次電子を放出させる電極へ負の電荷がたまった状態を作りだして断続的に電子を供給して放電を維持しています。)

上記はDC電源での発生の理論でしたが高周波電源で陰極と陽極が発生する理論は「VPPとVDC」のページで紹介しています。

スパッタリングで何ができるの?

上記の説明の様に基本的にスパッタリングは薄い膜(薄膜)を作るために利用されます。例えば近年では電子部品が非常に小型化されてきていますが、これらもスパッタリング等の技術が利用されています。ガラス等の基板に薄く金属の膜をつけ、不要な部分を削ることで非常に細かい電気回路を形成することでとても小さな部品を作成することができます。

またこの薄膜形成の技術を利用し、半導体部品や液晶パネル等も作られています。眼鏡やレンズと言った光学製品をはじめサーモグラフィーや赤外線センサーと言ったその他の光学素子や光学部品にも応用されています。(様々な膜を形成して一定の光のみ通すようにする等)

また最近では工具へコーティングを行い腐食や劣化、またより頑丈へするために利用されたり、おもちゃ、パチンコ等のアミューズメント機器に使用されている様なプラスチックへ金属の光沢を施したり、車まなどの装飾の目的で使用されていることも多くあります。その他には薬品へ日光による紫外線がはいらないようにするために薬品の袋等を金属による膜で保護する等上記で述べたもの以外でも様々な分野で応用されています。

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